紙端国体劇場様の二次創作置き場。
2011/06/28 (Tue)16:09
ちょっと前に×日光ー!とか言ってた時の産物。
関連は『神出鬼没』の京葉さん。
時系列的にはこっちのが先。
がたん、と車両が止まる。
「あー……やっと着いた」
ゴキリ、と首を鳴らしてホームへ降りた。
見上げた駅名には『大宮』の文字。
うるさいの見つかる前に仕事を済まそうと歩き出して、武蔵野は止まった。
橙と緑の車両の脇に見覚えのある姿。
その隣は知らない。
遠目にも顔が整っているのだけはわかった。
「誰だ?」
真っ赤なツナギ姿。
あの制服は東武のものだ。
路線図を思い出そうとして、やめた。
思い出せるわけがない。
興味と宇都宮の厭味を天秤にかけて、近づくのを諦める。
平和にいきたいのだ。
「さってと、俺はさっさと引継ぎと書類書いて帰ろ」
帰りは湘南新宿か京浜東北か埼京か。
速度を取るなら湘南新宿がいいのだが。
口論のようにも見える彼らがそれまでにいなくなっていてくれることを願いながら、詰め所のドアを開けた。
「まだやってっし……」
だらだらと指定の仕事を片付けホームに戻ってみれば、未だに見えるオレンジと赤の姿。
溜め息を吐いて逃げようとした矢先、宇都宮と視線が合った。
武蔵野の背中を冷たい汗が伝う。
薄い唇が弧を描いて、向かいの相手に何事か囁いた。
赤い背中が振り返る。
射る様な眼差し。
値踏みするように眺められた。
「どうしたの、武蔵野」
楽しそうに宇都宮に名前を呼ばれる。
逃げるに逃げれなくなって緩慢に二人のところまで歩いていく。
「何か用か?」
「そういう君こそ、何してるんだい?」
こんなところで、と続く言葉に武蔵野はむっとしたように眉を寄せる。
ダイヤ改正のことを知らないわけではあるまい。
本気で相手にするだけ無駄だ。
「俺? 俺はちゃんと真面目にお仕事してきたんだよ」
早く帰って炬燵に入りたい、と思いながら返事をする。
宇都宮を見上げるのが癪で、視線は見慣れぬ赤い姿を見ていた。
「お前、日光か?」
「だったら何だよ」
腕の腕章の文字を読み取って、今度は逆に武蔵野が日光を見る。
遠目でも整っていると思ったが、所謂イケメンだ。
背が低いのが若干気になるが、女性と比べれば高いので問題ないだろう。
「なんだよ?」
じろじろと眺める武蔵野に、日光が喧嘩腰の視線を向ける。
「あ、いや……」
へらり、と誤魔化すように武蔵野が笑う。
日光が怪訝な顔をする。
何を考えているかわからない笑顔で二人を眺めていた宇都宮は滑り込んできた電車に、唐突に乗り込んだ。
「それじゃ、またね」
「あ、てめっ」
「は?」
もの凄い勢いで振り返った日光と呆けた武蔵野を残して、無情にもドアは閉まると列車は走り出した。
悔しそうに列車を見送る日光に、不意に武蔵野は思いついて声をかける。
「アイツのこと好きなのか?」
「は? んなわけあるかよ!」
もの凄い速さで振武蔵野を見ると否定の言葉が投げつけられた。
「ふーん……」
眠そうな目で日光を見て、反対側に来た列車に武蔵野は乗り込む。
「まぁ、俺には関係ねーしな」
「何がいいたいんだよ、てめぇ」
はっきりしない武蔵野にイラつく日光の視線が刺さった。
それにもう一度へらり、と笑って。
「じゃあな、イケメン」
武蔵野の言葉が終わると同時にドアが閉まる。
何か叫んでいるのに手を振ってやれば指を立てられた。
「アイツ面白ぇー」
少し興味が湧く。
クツクツ、と笑って脳裏に整った顔を思い浮かべた。
「日光……」
東上とはまた違うタイプだな、とのんびり分析をしながら束の間の昼寝タイムと、目を閉じた。
散漫になっていく思考の中で、日光は伊勢崎以外どうでもいいんだよ、と言う声が聞こえる。
「は……?」
何だそれは、と思ったところで意識が切れた。
+++++
思ったより長くなった、な……
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