紙端国体劇場様の二次創作置き場。
2010/10/27 (Wed)16:03
パロ本出すので、その習作。
カップリング雑多ー。
ぺたり、と背中に触れる温もり。
誰、とは問わない。
もう覚えてしまった温度と匂い。
「銀座…」
「……うん」
帳簿をつける丸ノ内の背中にぴったりとくっつく華奢な体。
上がりかける心拍数を深呼吸して落ち着けた。
「銀座」
「……接吻してくれたら部屋に帰ってあげる」
つ、と白く艶かしい指が胸に触れる。
そのまま喉を撫で上げて頬を伝った。
「駄目だ」
「なんで?」
きゅ、と腰に残っていた手が着物を掴む。
僅かに体が固くなったのがわかった。
「理解るだろう」
「僕が、商品だから?……こんなに好きなのに、君に触れられないのは触れてもらえないのは、」
頬に触れていた手が力なく落ちる。
「辛いよ」
+++銀座様と丸ノ内+++
窓から外を眺める。
黄昏の空。
藍と朱と黄金が混じる。
「何が見える?」
するり、まわされる腕。
己より僅かに高い体温の掌が頬を撫でた。
少しだけ体を預ける。
「空が、」
「空?」
既に藍と紫しか残らない暗い空。
自分の心のような色に憂鬱になる。
「お前には青空のが似合うぜ」
優しい声に泣きたくなった。
+++武蔵野と京浜東北+++
「……」
目を開くと見慣れた天井。
見世の自分の部屋だった。
どうやって帰ってきたのか記憶にない。
堪えきれない吐き気と頭痛に倒れかかっところまでは覚えていた。
「あ、気がつきました?」
ひょい、とのぞきこんできた子供らしさの残る顔。
不器用な手つきで額に乗せてあった手拭いを埼京が取り替える。
「僕、は……?」
「街で倒れたんだって!武蔵野屋の若旦那さんが運んできてくれたんだよー」
しっかり教え込んだ口調が崩れている。
咎めるよりその口から飛び出した名前に硬直した。
「呉服、の?」
「そうー」
よく知ってるね、と暢気に笑う埼京に京浜東北は頭を抱えたくなる。
あの人は見世の客ではない。
「……それで?」
「えっとね高崎に渡して帰られたって」
あまりの事に別の意味で頭痛がした。
迷惑をかけた上、まともに礼もできていないとは。
見世の評判に関わってくる。
「父さんは知ってるの?」
「うん。京浜東北が起きたら会いにくるって言ってた」
事の重大さを理解していない埼京にため息をひとつついた。
+++京浜東北と武蔵野と埼京+++
「『外』?」
「はい!出たいと思いませんか?」
けだるげに窓から外を見ていた瞳が北陸を見た。
長い睫毛が白い頬に影を落とす。
「見世の外くらぃ僕だって出るさ」
不機嫌そうに吐き捨て、また視線を外に向けた。
「そうじゃないです。この街の、あの大門の外ですよ」
苦笑と一緒に上越の隣に座った。
開け放された窓から腕を出し街の出入り口に聳える門を指差す。
「別に」
「何でですか?」
話に乗ってくると思っていた北陸は素直に驚いた。
黒い双眸が北陸を見る。
逆に不思議そうに首を傾げた。
「僕はここで生まれたんだ。『外』なんか出る必要はないだろ」
きっぱりと答ぇた上越に北陸は胸が痛くなった。
+++北陸と上越+++
ちりん、店先に吊るした鈴が鳴った。
格子の傍でまどろんでいた総武が視線を上げる。
黒髪でまだ若そうな身なりの良い青年が見えた。
隣には見知った顔。
さらさらと癖のない髪が風に揺れていた。
「中央」
ぞんざいな口調で名を呼ぶ。
弾かれたように顔が上がり、隣の青年を放り出して駆け寄ってきた。
「総武!どうしたんだい君から呼んでくれるなんて!」
がし、と格子を掴む。
その様子に薄く笑みを作った。
ツイと置き去りにされた青年を煙管で指す。
「どちらさんだぃ?」
途端に機嫌の悪くなった中央の格子を掴む指を宥めるように撫でてやった。
すぐさま機嫌は戻る。
「仕事で懇意にしてくださる方だよ」
+++総武と中央と東海道本線+++
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