紙端国体劇場様の二次創作置き場。
2010/11/08 (Mon)03:33
綾瀬駅にて。
千代田と常磐。
お友達に押し付けたヤツです。
はぁ、と吐く息が白い。
マフラーを鼻の辺りまで引き上げて、千代田は時計を見上げた。
定刻はとっくに過ぎている。
遅延の連絡はもらっていたから、わざわざ待っている必要はないのだけれど。
「さむ……」
手袋をした手を擦り合わせる。
雪でも降りそうな寒さだった。
寒いのは苦手だ。
地下にいるときにはあまり感じない季節の変わり目が体感できるのは良いのだろうけれど。
寒いのは、どうしても好きになれない。
路線の半分が地上を走る東西などは千代田の格好を見て、しょうがないと言いたげな顔をする。
千代田に言わせてもらえればこの気温の中、コートにマフラーだけで走れるほうがどうかしているのだ。
「春とかなら、まだ大丈夫だっつの」
ぼそり、とぼやく。
長袖Tシャツにワイシャツ、セーター。
さらにその上にコートとマフラー手袋。
真冬になったらダウンコートを着よう、と心に決めた。
プアー、と言う音に顔を上げる。
ライトを光らせ、電車が走ってきた。
一、二歩下がる。
ガタン、と電車の最後尾が目の前で止まった。
開くドアから乗客が吐き出されてくる。
一瞬遅れて開いた乗務員室のドアから見慣れた、派手な色が降りてきた。
「遅いよ」
「うっせ! 俺だって好きで遅れたんじゃねーよ!」
明らかに千代田の着ているコートより薄手のコートを着ただけの格好で常磐が降りてくる。
千代田の格好を見て顔を顰めた。
「つーかさ、お前何なんだよその格好!?」
「は? 寒いからに決まってるだろ」
当然と言いたげに切り返されて、常磐は溜め息をつく。
雪が降っているわけでもなく、去年より少し気温が低いとはいえまだ全然許容範囲内の気温である。
「お前さ、真冬どーすんだよ」
「ダウン着るから問題ない」
きっぱりと言い切られて、思わず脱力した。
ただ、寒いのは本当なようで。
いつも通りに軽口の応酬を繰り返す千代田の唇の端が僅かに震えていた。
「…………」
ふ、と常磐の脳裏にいい考えが浮かんだ。
にぃ、と唇の端が歪む。
「ちよ、千代田ー」
「何?」
ちょいちょいと指先で千代田を呼んだ。
常磐のほうが上背がないため、千代田が僅かに屈む。
警戒心もなく近づいてきた千代田のコートを掴んだ。
「っ!?」
がくん、と体勢を崩した唇にキスをする。
触れた唇が随分と冷たくて、寒い寒いと言いながら長いこと待っていてくれたことを知った。
「なっ、ななななっっっ」
「寒そうだったからさー、俺の体温お裾分け」
真っ赤になった千代田に「温まっただろ?」と猫のように笑ってじゃれつく。
「なんだよ、それ……」
憮然と呟く千代田にくすくすと笑って抱きついた。
「寒いって言いながら待っててくれる千代田が好きー」
「……勝手にいってろ」
ふん、とそっぽを向く。
けれど振り払うことはされなかった。
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