紙端国体劇場様の二次創作置き場。
2011/02/08 (Tue)01:54
お友達に応援代わりに送りつけたもの。
夢小説仕様なので駄目な方は見なかったことに。
「もう、やだ……」
スン、と鼻を啜りながら地下鉄の階段を下りる。
「何でみんな私の話聞いてくれないのよ……」
あまり興味がなくても一生懸命話を聞いたのに。
いざ自分が話し出すと『えー、興味ないしー』と一蹴された。
「そんなの、私だってあなたの話に興味なっ」
ガクンッと体が傾いだ。
「きゃっ…」
階段を踏み外したらしい。
落ちる、と思う片隅で落ちたらこのもやもやもどこかいかないかな、と馬鹿なことを考えていた。
「危ないっ」
ドンッ、と。
覚悟した衝撃の代わりに声と、温かいものにぶつかった。
「?」
恐る恐る目を開ける。
目の前には白いシャツ。
襟元だけ若草色の。
「大丈夫ですか、お客様?」
視線をあげればにっこりと笑顔を浮かべた顔。
茶色の髪に、少し額が広いだろうか。
「あ、りがとうございます」
「余所見してたら危ないですよ? ウチの路線をお使いで?」
ひょい、と何を思ったのか横抱きに抱き上げられてしまった。
「きゃっ…!?」
「あ、っと。痴漢扱いは勘弁で」
小さく悲鳴をあげるとぱちん、とウインクをされて。
うっかり見惚れてしまう。
「足、痛めたでしょ。今ので」
「え……?」
言われて、そこでようやく気がついた。
足首がジンジンと痛い。
歩けないほど酷くはなかったけれど。
「車内までお連れいたします。しっかりおつかまりください?」
どこか芝居がかった調子で笑いかけられて、つられて笑ってしまった。
「はい、お願いします」
そろそろ、と遠慮がちに手を伸ばして首にしがみつく。
思いの外、がっしりとしているのに驚きながら電車内まで運ばれてしまった。
人はまばらで、そこまで好奇の目に晒されなかったのは幸いだ。
「さ、どうぞ」
そぅ、と壊れ物のように座席に下ろされて今更ながら羞恥で顔が赤く
なる。
「ありがとう、ございます」
蚊の鳴く様な声でお礼を言えば彼はくしゃっ、と笑った。
「いいえ。ご無事で何よりでした。本日は都営地下鉄新宿線をご利用いただき誠にありがとうございます。お気をつけてお帰りください」
マニュアル通りのように口上を述べ、きっちり頭を下げるのに驚いていると、とても優雅な動作で顔を上げる。
ふわり、と笑顔を零し去り際に再びウインクをひとつ。
「気をつけて帰ってね、子猫ちゃん」
「!?」
恐ろしく気障な台詞を残して車両を降りていった。
何か言うより早く、発車のベルが鳴り、ドアが閉まる。
「面白い人…」
くすり、と笑って座席に背中を預けた。
「素敵な人だったなぁ」
名前ぐらい聞いておけばよかったと、今思っても後の祭りだった。
+++
書いてて楽しかった!!
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