紙端国体劇場様の二次創作置き場。
2011/01/18 (Tue)17:25
そのままです☆
九州陽子と、州子東海道と、山陽道子が好きです。(真顔
お友達に献上したものー
「……」
「東海道ー?東海道ちゃーん?」
新大阪駅で不機嫌オーラを隠そうともしない東海道を山陽は必死に宥めていた。
「何故私がこんなところまでこなければならんのだ」
「だって、東海道は俺の接続先だろ?」
過去の確執もいい加減にしてもらわないと山陽がもたない。
無理矢理丸め込んでかろうじて、関西まで引っ張り出してきたものの、名古屋を過ぎた辺りから完全に臍を曲げてしまいずっとこんな調子であった。
「いい加減にしろよなー。過去は過去だろ?今はお前のが先輩なんだから」
「そう言うもんだいじゃない!」
きっ、と半ば涙目で東海道が山陽を睨む。
その後ろに500系が滑り込んできた。
降りてきた姿に、ぽかんと山陽は口を開ける。
「聞いているのか、山陽!?」
苛々と怒鳴りつける東海道に何か言うより早く。
歩み寄った人物の手が東海道の頬に伸びた。
「あら、どうしたの?そんなに声を荒らげて」
「ひっ……」
ひたり、と東海道の頬に掌が触れる。
一拍遅れて肩越しに顔を覗き込まれた。
きっちりと纏められた黒い髪。
銀フレームの眼鏡に、いかにもキャリアウーマン、といった姿の女性だった。
「えと、あの、州子サン?」
「あら、いたの山陽」
カッキン、と硬直した東海道の頬を愛しそうに撫でていた州子は山陽の呼びかけに今気がついたとばかりに片眉を持ち上げる。
視線は東海道に注がれたまま。
「しゅ、州子……」
「久しぶりね、私の可愛い東海道。少し会わない間に痩せたんじゃなくて?」
サァッと血の気の引いた東海道の顔を心配そうにのぞきこんだ。
泣き出しそうな東海道とそれを気にする気のない州子を見ながら、山陽は小さく首を傾げた。
「あのさ、九州は?」
「あぁ、あれなら簀巻きにして置いてきたわ」
さらり、と口にされた台詞に山陽の表情が固まる。
相変わらず、州子の視線は東海道を捉えたまま。
髪を整えたり、制服の汚れを払ったりと手は忙しく動いていた。
「簀巻き……」
「えぇだって、私の東海道に会いに行くんだって、自慢げに言うんですもの。代わって欲しい、駄目なら同行を頼んだのに一蹴されたから」
ねぇ?と東海道に微笑みかけて、ようやく山陽を振り返った。
「大丈夫よ。博多には陽子がいるでしょう」
そのうち見つけてくれるわ、と続く言葉に大慌てで山陽は携帯電話を取り出す。
短縮番号で相方に電話をかけた。
かくかくしかじかで事情を説明する。
最後まで聞き終わる前に『九州……っ』と言う悲鳴のような声と走る音が聞こえて、電話は切れた。
「よーこちゃん……」
「ほら、大丈夫でしょう?」
情けない山陽の呟きに呆れたような州子の声が追い討ちをかける。
何ともいえない表情で顔を上げた山陽はそこで固まった。
「あ、ああああの、州子サン!?」
「何?」
眉を顰め、州子は山陽を見る。
その手はしっかりと東海道の腰を抱き、新幹線の中へと引っ張っていくところであった。
行き先は、『博多』。
「何?じゃなくてですねっ!連れていかれると困るんですけど」
「何言ってるのかしら、貴方は。何のための接続先なの?こんなに痩せてしまって疲れた様子の東海道を見て何とも思わないの?あぁ、可哀相な私の東海道。頑張り過ぎなのよ。少し休息が必要なの、ね?私と一緒に行きましょう。美味しいものを食べさせてあげるわ。あぁ、九州のことは気にしなくていいのよ。私が守ってあげるわ」
後半は半分以上意識を飛ばしている東海道へ向けて。
立て板に水で喋ると、ビシッと山陽に指を突きつけた。
「そう言うわけで、東海道は少し貸してもらうわ。大丈夫よ。十分休息を取らせたらきちんとそちらへお返しするわ」
「いえ、その」
一方的な決定に反論しかけた山陽をひと睨みで黙らせると、携帯電話を取り出して何事か操作する。
「?」
満足そうに頷いて州子が携帯電話を仕舞うのと同時に山陽の携帯電話が鳴り響いた。
「は『山陽ぅぅぅっっっ!!!』
通話状態にした途端飛び込んできたのは道子の涙声混じりの悲鳴。
ぽかん、と州子を見ればにっこりと笑い、手を振っていた。
「道子にも『東海道を借りるわね。』と連絡しておいたから大丈夫よ。それじゃぁ、またね。山陽。東海道がいない間の仕事は頼んだわよ」
「ちょ、え、州子サンっ!?」
ぐずぐずと電話口で泣いている道子を宥めているうちに、さっさと州子の姿は新幹線の中へと入っていってしまう。
当然、東海道を伴って。
「俺に、どーしろって言うのさ……」
途方に暮れた山陽を残して、無情にも新幹線のドアは閉まった。
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