紙端国体劇場様の二次創作置き場。
2011/01/28 (Fri)23:37
KYです。
通常運行仕様。←
キンと冷えた空気に大きな月が浮かんでいた。
「ねぇ、九州」
「なんだ」
ふわり、と陽子の長い髪が舞う。
僅かに欠けた月を背中に酷く綺麗に笑った。
「私、貴方が好きよ」
「…………」
綺麗な微笑み。
月明かりの下、儚く消えてしまいそうなほど。
「貴方が、好き」
「っ……」
思わず手を伸ばして、九州は陽子の腕を掴んだ。
想定外だったのか、笑みの形をとっていた双眸が驚きに見開かれる。
「どう、したの?」
「……」
ぐ、と陽子の腕を握る力を強くして九州はぽつり、と呟いた。
「消えてしまうかと思った」
「まさか、消えないわよ」
くすくすと笑って、もう一度「好き」と囁く。
「あ」
「しぃっ」
何か言いかける九州の唇を陽子の指がとめる。
「いいの、言わせて。今この瞬間だけだから。答えは求めてないから。だから」
貴方が好きだといわせて欲しい。
一瞬泣き出しそうに歪んだ顔に九州は何も言えなくなった。
「……好きにしろ」
「ごめん、ありがとう」
小さく呟くのに嬉しそうに笑う。
抱きしめたい衝動を押さえ込み、九州はただ陽子を見ていた。
陽子も九州を見つめていた。
「貴方が、好きよ」
「……あぁ」
肯定するように頷く。
儚くも美しい陽子の微笑は、月下美人のようだと思った。
PR
Comment